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知名度が低い中小企業が採用で成功するための戦略とは?

掲載日2024年9月11日

最終更新日2024年9月19日

知名度が低い中小企業が採用で成功するための戦略とは?

目次

中小企業の採用を支援

マンパワーグループでは、採用代行・採用コンサルティングサービスを提供しています。下記のようなお悩みのある方は、お気軽にお問い合わせください。

「採用担当者が足りない」
「自社に適した採用方法がわからない」
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人材採用では、有名な大企業が有利だと感じがちですが、必ずしもそうではありません。知名度が低い中小企業が独自の採用戦略で成功している例も多々あります。今回は、中小企業が採用で成功するための具体的な戦略とコツを解説します。

中小企業の採用状況

はじめに、中小企業の採用状況の現状を確認します。

全国約6,000社の中小企業を対象に実施した「人手不足の状況および新卒採用・インターンシップの実施状況 外部リンク 」(日本商工会議所・東京商工会議所2022年9月)調査によると、「人手が不足している」と回答した企業の割合は全体の約65%、過去最高水準に迫るレベルです。業種別にみても、全ての業種が「人手が不足している」が54%を超えており、建設業(77.6%)、運輸業(76.6%)、宿泊/飲食業(73.9%)等、7割を超える企業が人手不足に直面しています。

人手が不足している

この実態は求人数にも反映されています。厚生労働省の一般職業紹介状況(令和6年5月分) 外部リンク によれば、従業員300名以上の企業の新卒やパートを除いた新規求人数に対して、300名未満の企業ではその21.4倍もの求人数があり、中小企業にとって採用が厳しい現実を示しています。

新規求人数

知名度が低い企業の採用活動が難しい要因

知名度が低い企業の採用活動が難しい要因

知名度が低い企業が採用活動で苦戦する要因について解説します。

売り手市場が続いている

採用の現場では、長期にわたる少子化が労働力人口の減少を引き起こし、構造的な人手不足の原因となっています。

2023年度版 労働力需給の推計-速報-(独立行政法人 労働政策研究・研修機構) 外部リンク 』によると、1人当たりゼロ成長に近い経済状況のもと、労働参加が 2022 年と同水準で推移した場合、2022年の6,902万人から、2030年に6,556万人、2040年に6,002万人に減少すると見込まれています。現状の延長では、労働力人口はこれまでにないほど減少することが予想されます。

労働力需給の推計

仮に、経済・雇用政策を講じ、成長分野の市場拡大が進み、女性及び高齢者等の労働市場への参加が進展する場合、一時的に2030年に6,940万人と微増しますが、人口全体が減っているため、2040年に6,791万人といずれにしても労働人口は減るという予測になります。

いずれにしても、労働人口が減るため、採用は売り手市場が続き続けるという知名度が低い中小企業には厳しい採用市場が続くことが前提となります。

採用にコストをかけられない

知名度が低い中小企業は有名・大企業ほど、売上や利益が十分に確保できないため、そもそも採用に多額のコストをかけられません。

仮に知名度の低さを補うために1人あたりの採用コストを高く設定しても、採用人数が大企業と比べて少ないため、トータルで採用に投入できる費用は大企業に及ばず、結果として採算が合わないことが多く、コストを抑えざるを得ない状況に陥りがちです。

関連記事採用コストとは|計算方法と一人あたりの平均、5つの削減ポイントを解説

母集団の形成ができない

知名度がなく、採用コストもかけられなければ、十分な母集団を形成できるほど、求職者は集まらないのが現実です。最初の段階で躓きやすく、そのため厳しい採用競争を余儀なくされます。

関連記事【中途採用】採用手法大全 12の手法を解説

採用のノウハウがない

中小企業では、人事や採用の専門担当者を置けるほど人員が潤沢ではなく、他業務との兼務。が多いのが実情です。

採用活動に必要な人的余裕が足りないことに加え、PDCAを回せるほどの求人数がないので、採用活動を広げられず、また経験や知識を蓄積しにくくなる構造となっています。

採用戦略の欠如

大手企業の計画的な採用とは異なり、中小企業の採用計画は当面の収益の見通しと現場の忙しさを勘案した若干名の採用や離職者の欠員補充など、状況対応が大半です。

新卒採用をするにしても、採用コストもノウハウも十分でないまま、兼任で採用を行うケースが多く、採用の重要性は理解していても、活動にかけられる時間や手間には限界があります。その結果、採用戦略を考える余裕もノウハウもなく、従来の方法で採用活動に対応するしかない状況が当たり前になっています。

関連記事【採用戦略の立案】進め方と6つのフレームワーク

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マンパワーグループでは、採用代行・コンサルティングサービスを提供しています。支援内容なお見積もりはお気軽にお問い合わせください。

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知名度が低い企業が取るべき5つの採用戦略

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しかし、中小企業は採用になす術なし、というわけではありません。「中小企業だからこそ勝てる採用戦略」について解説します。

戦略1.母集団を形成するより、求める人材だけ惹きつけ採用する

中小企業の場合、大手企業と同じ土俵で勝負してはいけません。弱者が強者を倒すことができるランチェスター戦略を採用に持ち込むのです。

ランチェスター戦略の要諦は『弱者が勝つには、真正面から全面勝負をするのではなく、自社が勝てるところに全集中する』ということです。

ライバル企業との「差別化」を狙っても、求職者からみると「どんぐりの背比べ」にしかならならないので、1点突破でのダイレクトな求職者への訴求が正解です。

3つの考え方を解説します。

1点集中主義(絞り込んで勝つ)

1点集中主義とは、自社が強みを発揮し圧倒できる市場に絞ることで、求める人材を確保する戦略です。

あるAIベンチャー企業の典型的で分かりやすい例を紹介します。

対面での面接中、担当者が急遽外出することになり、リモートでの面接に切り替わりました。リモート面接が続くなか、外出していたはずの担当者が会議室に再度現れます。リモート面接の相手は、実は担当者そっくりのAIだったのです。

この演出により、驚きと感動で応募者の心をつかみ、優秀な人材の採用に成功しているそうです。AIでなくとも自社サービスや製品を活用して同様なアプローチを仕掛けることは検討可能でしょう。

注意点は2つ。

ひとつは、一点集中したその先で、本当に求める人材が確保できるかどうです。採用に成功しても、自社が求める人材要件と乖離が大きすぎると、戦力化も定着化も望めません。「ただ勝てればいい」という考えでは失敗します。

もう1つは、人材の奪い合いで確実に勝てるかどうかを見極めることです。集中投資するがゆえに、失敗すれば大きな損失となり、リカバリーが厳しくなります。

足下の敵攻撃の原則(同クラス未満を出し抜く)

大企業や有名企業、ライバル企業と真正面から勝負するのではなく、同クラス未満の企業を出し抜くことで、競争優位を勝ち取る手法です。出し抜くと言っても、求職者に喜んで選んでもらえるようにする視点が重要です。

「初任給の高さ」等は分かりやすい例ですが、コスト面で難しい場合の有効な打ち手としては「社長自ら候補者をダイレクトスカウトし、社長とのカジュアル面談や懇親会から入る」などがあります。

大手企業や有名企業であれば、人事面接や現場面接など経営幹部との面接までのステップがあっても、応募者は待ってくれますが、知名度の低い中小企業ではその限りではありません。そのため、周囲に合わせた一般的な選考プロセスではなく、社長からのダイレクトなアプローチを最初にすることで、同クラス未満の企業を出し抜くことが可能になります。

競合他社がこの戦略に気づくのは、採用スケジュールの終盤になるでしょう。たとえ辞退者が増えて異常に気づいたとしても、辞退者が本音を語らなければ、詳細の把握は難しいです。

また、競争相手が社長自らダイレクトスカウトに切り替えるほどの本気や気概を持っているケースも少ないものです。このように、待遇面の勝負が厳しい場合でも、アプローチを工夫することで競争優位は作れます。

No.1主義( 1 位を狙う)

これは一点集中主義に近い考え方ですが、採用においても何かでNo.1を達成できれば、他社を大きく出し抜くことが可能です。日本で一番高い山は富士山だと広く知られていますが、「では二番目に高い山は?」となると、即答できる人は少数であることが物語っています。

無理のない範囲で充分です。例えば、高卒の労働市場で強みを持つ、特定の大学の卒業生が多く入社して活躍しているなど、その大学の卒業生にとって就活で有利な存在感を示すことができれば理想的です。

採用のランチェスター戦略は複数の原則を組み合わせて行うことも可能です。

例えば、上記の3つを組み合わせることで、さらに自社の独自性が高まり、成果につながりやすくなるのでおすすめします。

「採用担当者が足りない」を支援します

限られた人数で採用を成功させるために、採用代行・コンサルティングサービスを提供しています。ご希望に合わせて、支援範囲を決定できるため、取り組みたい業務に集中することが可能です。ご相談やお見積りもお気軽にお申し付けください。

RPO

戦略2.「自社で長く働き成果を出す」人材に焦点を当てブルーオーシャンを見つける

人材獲得競争が激化するなか、採用を確実にしたいからと、自社で設定した求人の人材要件を「普通」か「最低限」のレベルまで引き下げる現象が中小企業で起きています

しかし、要件レベルを落とし過ぎると、入社した後のOJTではリカバリーできず、結果的に採用した人材が組織の足を引っ張り、生産性が低下したり、既存社員が不満を抱いて離職するなどのリスクが発生します。

人材要件のレベルを単純に引き下げるのではなく、メリハリをつけることが重要です。

「仕事に合った資質」と、「自社のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)等の経営理念と同じ判断軸・価値基準」を最低限の人材要件として設定すれば、リスクは軽減します。

仕事に合った資質があれば、本人も達成感や成長感を自覚しやすく、教育効果もあがりやすくなります。

また、自社のMVVと同じ基準で物事を判断する人なら、OJTの場面でも納得や共感を得やすくなるため、自然に自社に馴染みやすいです。価値観のズレは修正が難しく、教育・指導の負荷も大きいですが、同じ判断軸・価値基準を持っている人材なら、離職リスクも抑制できます。

しかし、面接で直接的な質問をするのは避けましょう。

面接の場で「当社の仕事はあなたに合っていると思いますか?」と聞いても、応募者は合っていると思わせそうな自己PRを用意してきています。「MVVへの共感」についても「共感しました」と言われてしまえば、それ以上のやりとりは難しくなります。

嘘発見器を使うわけにもいきませんし、質問攻めで応募者が圧迫を感じたら、逆に嫌われてしまうリスクが高まります。そうならないための工夫やコツを解説します。

人材要件をYes/Noの判断基準に落とし込む

判断基準となる人材要件を、より明確に整理することが必要です。自社の仕事に合った資質を明確にするために、まず仕事のコツを洗い出しましょう。重要なのは、ポジティブな視点だけでなく、一見ネガティブに見える視点からも要件を洗い出すことです。

なぜなら「良い人材」を求めるあまり、採用を考える際に理想的な要件を並べすぎてしまい、結果的に「そんな高スペックな人の採用は難しい」という結論に至ってしまうことがあるからです。

ネガティブな視点も含めて洗い出す際のコツは、要件を洗い出した後に、逆の視点から何が自社にとってNGなのかを書き出すことです。このYes/Noの関係が明確に成り立つ要件を判断基準に設定しましょう。

(例)地方の中小企業・せんべいメーカーの現場に求められる要件

Yes:飽きずに同じことを粘り強くやり続けること
↓↑
No:イノベーションや独創性

Yes/Noを対比させて表現することで、ポイントが鮮明になります。この会社では、決められた作業をきっちり、ミスなく、飽きずに集中できる要件を持つ人材が自社にフィットし、継続的な成果を出し、長年勤めてくれる可能性が高いと分かるのです。

イノベーションや独創性を起こせそうな人材は、確かに面接の場でも魅力を感じます。他社からも引く手あまたでしょう。採用に成功すれば、自社に新しい風を起こしてくれそうですが、事業のキーとなる製造現場で根気強さが必要とされる作業が伴う業務を任せると、資質が合わず、成果が出せないからと離職してしまうリスクが高いことが考えられます。

「飽きずに同じことを粘り強くやり続ける」という資質の有無は、適性検査、面接でのインタビュー、実習などで見極めていきます。この方法により、自社にとって本来のメインターゲットとなる人材を惹きつけ、採用することが可能になります。

関連記事【質問例あり】コンピテンシー面接とは|基礎知識とやり方を解説

MVVへの共感を見極めるにはリアクションで判断

企業のホームページをはじめ、ネット・雑誌・会社案内、各種発行物の記事などを頼りにMVVを探り、選考時に「たいへん共感しました」とPRしてくる人もいますが、それを鵜呑みにしてはいけません。逆に、特に下調べもせずにきた求職者の中にも、自社のMVVにマッチした人材がいることもあります

MVVは「経営から現場までの共通する判断基準」になります。ゆえに、ある状況で瞬時にMVVに沿った考えやYes/Noの判断ができるかどうかを面接の場で判断するといいのです。コツは「リアクション」で見極めることです。PRは作文できますが、リアクションの場合は瞬時に嘘をつけないからです。

どう見極めるかと言うと、判断に迷いそうな場面を提示し、「あなたならどうしますか?」と問うのです。考えさせると綺麗ごとで作文されるリスクがあるなら、選択肢をいくつか出して選んでもらうのもいいでしょう。

「おばあさんがゆっくり歩いて来店されました」という場面を設定し、「声をかける」「順番待ちカードを持ってきてあげる」「お茶を出す」等、いずれも正解といえる選択肢を用意し、選んでもらうのです。このようにして求職者本人の本質的な判断基準を見ます。

リッツカールトンなど、クレド(MVVをより具体的にしたもの)で有名な企業も、判断に迷うケースをクレドに照らして判断する訓練を行い、浸透を図っています。このアプローチは採用だけでなく、自社内のMVV浸透にも活用できます。

いずれにしても、キーとなるのは欲張りになり過ぎないことです。チェック項目を多く盛り込んでしまうと、マッチする人の割合は減ってしまいます。最低限入社時に持っていて欲しいことと、入社後に教育で鍛えられることを区分けして設計するといいでしょう。

戦略3.専門性より「機能を満たす人材」を要件にして「原石」を見つける

中小企業だからこそ、即戦力になる高い専門性を持つ人材にきて欲しい、という気持ちは痛いほどわかります。しかし、そのような人材は、自社より有利な処遇や働く環境を提供できる他社や、大手企業・有名企業も欲しがる人材です。そもそも、高い専門性の人材は転職市場に出る前に、次の職場が決まっている青田刈り状態であることが多く、真正面から勝負すると負け戦になるのが普通です。

中小企業がやるべきことは、転職マーケットで該当する人材から、近しい求職者を採用できるように、「置き換え可能な状態を設定する」ことです。専門性は、業務に対する基本的な理解さえあれば、後からでも吸収できるものです。

そのため、求める機能を満たす視点で「ポータブルなスキル・経験」に落とし込み、転職マーケットにいる原石を見つけて磨くことが、中小企業にとっての正解です。以下より、「機能を満たす人材」を採用するための具体的なステップを解説します。

ステップ

ステップ1 役割を洗い出す
ステップ2 成果を出すキーを可視化する
ステップ3 ベンチマークを置き、要件を整理する
ステップ4 資質を条件に加えて、募集をする
ステップ5 教育体制を整えて採用する

【ステップ1】入社して欲しいポジションの「役割」をマネジメント面と機能面に分け、機能面を業務の流れに沿って洗い出す

人材要件を役割で考えると、人や組織管理に関する面(マネジメント面)と、事業や業務に沿って成果を出す面(機能)が混同されがちです。この2つを分けることが重要です。

マネジメント面の専門性や経験を持つ人材は、転職マーケットから多数発見できます。問題は、機能面です。ポジションが高ければ高いほど、その機能を経験して成果を再現できる人材は極少数となり、転職マーケットにはいないものです。

この機能面の要件から「アナロジー」を行い(=類推し)、対応できる人材を転職マーケットで探すのです。そのためには、まず機能面を業務の流れに沿って洗い出すことから始めます。

【ステップ2】業務の流れに沿って、その機能で成果を出すキーを可視化する

業務の流れに沿って、その機能で成果を出すためのキーポイントを業務ごとに可視化していきます。業務の流れだけでは専門性や自社特有の要素に意識が向きがちですが、キーポイントを見れば、その制約が外れ、要点が浮き彫りになります。

この要点をクリアできる経験を積んだ人材に「異業種転職」「越境転職」をしてもらうことを想定して、人材要件を設定します。

【ステップ3】機能面の業務の流れと成果を出すキーポイントが似ていて、転職マーケットにいる人材をベンチマークして要件を整理する

転職マーケットの求人情報を持っているのは、転職エージェントです。転職エージェントに声をかけ、異業種からこの要点をクリアできそうな候補者がいるか「アナロジー」をして探してもらいます

採用におけるアナロジーとは、機能を満たす要点をもとに、異業種でも似たプロセスや要点を押さえて成果を出した人材を求人データーベースから探してもらい、転職マーケットで採用可能な人材要件に落とし込んでもらうことです。

結果、機能面とマネジメント面の両方から、転職マーケットで見つけられる人材要件に落とし込めます。このアナロジーをもとに人材要件を設定するノウハウは、ヘッドハンティングを行っている転職エージェントが有しているので、相談してみるといいでしょう。

関連記事人材紹介サービスとヘッドハンティングの違いとは?

【ステップ4】短期での成長・アップデートできる資質を人材要件に加えて最終化し、転職エージェントに候補者を紹介してもらう

この人材要件はドンピシャではないので、入社後、短期間で専門性や求めるスキルを身に付けてもらわなくてはいけません。従って「短期での成長・アップデート」ができるかどうかも人材要件に加え、実際に採用活動に移りましょう。

【ステップ5】短期で成長・アップデートできる環境を整え、実際に採用する

求職者にとっては越境転職となるため、「なぜ私が?」という不安を抱くこともあります。多くの場合、求職者はこれまでの経験を基にした転職を考えますし、家庭があるなどの理由で転職リスクを避けたいと考えるケースもあります。

そのため、人材要件で設定した「異業種でも要件を満たしている」ことに加え、成長・アップデートできる環境がどのように整備されているかをきちんと説明し、求職者に安心してもらうことが必要です。

実際の採用場面でも、再現・応用できそうか、コンピテンシーインタビューや面接だけでなく、ケースを解いてもらうなど培った知見を自社で応用できるか本人に判断してもらうプロセスを取り入れるといいでしょう。

事例

学習塾の経営と教材作成を行っていた方が企業向けの人事コンサルティング会社の面接を受けた例では、教える中身は違っても、研修プログラムやテキスト作成のステップと勘所はほぼ一緒であったこと、講師経験によってプレゼンが得意なことも相まって、異業種出身でも要件を満たしている人物だと分かりました。

入社後のフォローをする約束で採用を決め、入社後大いに活躍されています。幹部職でなくても、一度このパターンで人材要件とフォローの環境を作ってしまえば、転職エージェントを通さなくても、越境採用は可能になります。

このように、転職マーケットに求める人材がいない、いても自社の待遇では選んでもらない場合でも、安易に妥協せず、アナロジーの手法によって原石のような人材を見つけ出すことで、求める人材を確保できるようになります。

戦略4.研修やOJTより、どんな成長ややりがいが得られるかを描けるようにする

新人が入社早々辞表を持ってくる主な原因は、配属のミスマッチか職場の人間関係の悪化です。入社後、「配属は会社の都合による」「新人は職場のやり方に合わせ、早く慣れること」という企業の論理は、今の新人には受け入れてもらえません。今の新人はピュアな傾向があるので建前と本音の切り分けが要領よくできず、全てを素直に受け入れます。

そのため、面接時に「企画の仕事をやりたい」と言い、「もちろん企画の仕事にもつけるようにするよ」と言われたのに営業配属となった場合、裏切られた感覚を持ちます。「聞いていない、騙された」と即刻退職しかねません。

「配属は会社都合による」と事前に聞いていたとしても、「やっぱり地方には行きたくない」と言って退職を決断することに躊躇がありません。労働力不足の蔓延というマーケット事情もあって、第二新卒がキャリア形成の不利にはならない背景もあります。

労働観も上の世代とは異なります。不合理・理不尽な昭和のやり方に合わせる必要などないと新人は考えているので、今の管理職は自分が教わった頃とのジェネレーションギャップの大きさに頭を抱えるのです。対策としては、以下のような方法があります。

エンプロイージャーニーマップを作成する

ひとつは、配属やキャリアについての説明と納得です。「朱に交われば赤くなる」にしても、なぜ朱に交わる必要があるのか説明が求められる時代です。

配属・異動などで「嘘」をついてはいけませんが、すべての希望をかなえることは現実的ではありません。物理的にポストが足りないうえ、誰もがその仕事に向いているわけでもないためです。新人が「自らモチベーションを高め、持続させていけるような仕事」に取り組む意義を見出せるように導くことが肝要です。

具体的には、入社から退職までにどのような経験を積んでいけるかを整理した「エンプロイージャーニーマップ」を作成し、新人がやりたい仕事に就く前に、どのような経験を積むべきか、またその経験がどのようにキャリアの選択肢を広げるかを示し、新人たちが納得できるようにサポートします。

OJT等の指導の工夫・改善をする

もうひとつは、OJT等の指導の工夫・改善です。上の世代が教わったことや自ら得たノウハウ自体は今も通じる重要なものが多いので、その伝え方をアップデートすればいいのです。

エンプロイージャーニーマップは、入社からオンボーディング・配属・評価・昇進昇格・退職まで、どんな経験をどんな流れで積んでいけるか、その結果、どんなキャリアの選択肢が増えていくかを示したものです。ただ単にキャリアをパターン分けしているのではなく、入社後に突き当たる壁、そのときの心理状態、その壁を越えるための会社・上司の支援といった、成長ステージに沿ってどうクリアしていくかを描かれたものです。

従来の昇進昇格モデルでは、右肩上がりの進み方しかなく、キャリアパスが示されても、次の職位にどうすれば就けるかは分かりません。目指す職位に誰かが既に座っていると、キャリアの道がふさがれていると感じ、挫折や退職につながる可能性があります。このデメリットを解決するのが「エンプロイージャーニーマップ」です。

エンプロイージャーニーマップを描く際の要点は、ペルソナを具体化し、世代に合わせた特徴でグルーピングすることです。

「オーナー社長が好きで入社し、いわば子分としてついてきた第一世代」

「会社が成長し、経験を積んだ方々が中途即戦力で入った第二世代」

「新卒採用が始まったZ世代」

など、世代別の特徴をキャラクター化することも有効です。

新人たちは職場の方々の思考や行動、特性が分からず、エンプロイージャーニーに書かれた中身と現実が違うと見て「綺麗ごとだ」「嘘だ」と見切ります。

世代別の特徴を出すと「社長のために、お前は○○できるのか」といったパワハラを言うのは第一世代、社長の子分だから。そういうキャラだと新人も分かれば割り切ることができます。

新人はデジタルネイティブで子供の頃からゲームに触れてきています。エンプロジャーニーというゲームを進めるとき、どんなキャラが登場し、どんな特徴があり、味方のつけ方や対処方法が分かれば、職場に溶け込みやすくなります。

伝え方は響く納得するやり方を若手に教わる

次に、伝え方のポイントについて解説します。1番のポイントは、正解に1番近い人に聞くことです。要は、新人や入社年次が若い社員に「上司や先輩からこう言われたことが嫌だった(過去の正解)」「逆にこう言ってくれたら素直に聞けた(今の正解)」という問答集を人事と一緒に作ることです。

実際の上司や先輩の一言だけでなく、「こう言って欲しかった」という本音やYouTube・ネットからの引用でも構いません。人事がアシストしながら、伝え方の○×対応表を作り、研修等のコンテンツに落とし込みましょう。

ビジネス書やコミュニケーションや指導の研修講師は管理職以上の世代が大半なため、おじさん世代のノウハウが残っていることがあるからです。おじさん世代はおじさん世代のノウハウに共感しますが、今の若い人に響くは別なのです。

関連記事Z世代の仕事における特徴とは?育成とマネジメントを解説

戦略5.面接の段階から「巻き込み型」の問いを行い、「この人とここで働きたい」と感じさせる

自社が求める人材は、他社も欲しがる人材であり、複数の内定を得た中から相手に吟味されるのが前提です。内定者の心が他社に移らないように、定期的なフォローを実施し、疑問や質問、不安が生じた際には迅速に対応できる体制を整え、寄り添って不安解消に努めることが重要です。しかし、ここに罠があります。

他社も同様にスピーディーかつ寄り添う丁寧な対応をするので、それだけでは差別化ができないのです。加えて、会社の対応は、内定辞退されたくない意識が最優先されますから、「全く問題ない」「大丈夫ですよ」と良い側面ばかりを強調してしまい、逆に不安感や疑心暗鬼が生まれてしまうのです。

内定者が本音で求めているのは、寄り添いや耳当たりのいいトークではなく、「入社後に自分が職場で働き、活躍できるリアルなイメージ」です。やりがいを感じ、成長して認められ、世の中の役に立つ確信が得られれば不安を覚えませんし、ライバル企業から内定が出ても、こちらを選んでくれる確度は高くなります。

働くイメージをつかんでもらうためには、可能であればリアルな体験が一番です。工場や職場見学、新卒であればインターンシップなどである程度カバーできますが、職種によってはリアルな体感が難しい場合もあります。その際、「この人と働きたい」「ここで働きたい」と感じてもらうためには、コミュニケーションの取り方に工夫が求められます

特別なコミュニケーションを取る方法のひとつをご紹介します。

「問い」を通して特別感を描かせる

選考プロセスが最終に近づく段階からは「評価」ではなく「相談」を持ちかける質問を加えていきましょう

「次の若者向けのサービスで、あなたの意見やアイデアを教えてくれませんか?」

「こんなこと一緒にやりたいですよね、どう進めましょうか?」

というように、入社して一緒に働く姿を想像させる問いを投げてみるとよいでしょう。

求職者は「私は認められている」「頼りにされている」と自己肯定感が上がり、一緒に仕事に取り組む疑似体験を通し、入社前から自社の一員になる自覚が芽生えます

「我社の商品のAをもっと10代後半から20代前半に広めていきたいのだけど、どうしたらいいか、あなたの意見や提案を貰えると嬉しいのですが、いかがですか 」と相談を持ち掛ける問いも同様に効果があります。

素早い対応や内定者懇親会等は、どの企業も普通に行うことですし、ライバル企業も「あなたのことが大切です」と言っています。ゆえに、「巻き込む問い」が重要になります。

既に仲間として参画している意識を形成し、入社前から当事者意識を引き出します。これは意外とできている企業が少なく、コストもかかりません。次のミーティングまでいい意味で“後味を引く”ので心変わりを防げます。

今の新人は、会社が一生面倒をみてくれないと分かっているので、即戦力スキルの習得や成長につながる体験を強く求める傾向があります。その意味でも「問い」を使いこなすことが要諦となるのです。

リファラル採用の落とし穴

リファラル採用は、社内の人材が採用目的で友人・知人に声をかけるため、確かに自社の文化や仕事に適合した人が集まりやすい側面もあるのですが、そこには落とし穴もあります。

紹介してくれる従業員は、自分より優秀な人材だと自分の地位が危うくなるため、部下として使いやすい人を紹介してくる可能性が高くなります。せっかく紹介しても、採用面接で落ちてしまったら、紹介者と応募者との人間関係にヒビが入るリスクもあります。

関係が本当に近い人より「ゆるくつながっている人」を紹介してくる傾向があり、その場合は必ずしも自社が求める人材とは限らない事態も発生します。極端な例では「遠い親戚で就活がうまくいっていない子がいるので紹介してあげようか」というレベルの話になりかねません。

さらに、長年にわたって友人・知人の紹介をお願いすると、紹介できる人材が枯渇し、取り組み自体が形骸化してしまうこともあります。そもそも、従業員のエンゲージメントが高くないと、狙い通りのリファラル採用は成立しません。そのため、従業員のエンゲージメントが一定以上の高スコアであることが前提となります。

リファラルで質と量を確保し続けるためには、新卒採用と同じように「母集団」を形成することが重要です。母集団の中から、自社と人材の間で「お互いによさそう」と思える感覚が芽生えた段階で、随時採用面接に進むことが正解です。

母集団を形成するといっても、新卒採用とリファラル採用では、その意味合いや位置づけが大きく異なります。次の項目では、母集団の位置づけと運用について解説します。

母集団は「投資」、自社のファンや仲間を増やすことに終始する

リファラルの母集団は、採用前提にした集団ではなく、「自社のファンや仲間」としての位置づけが重要です。従って、社内イベントに社外の人も参加してもらう、ゆるい関係で人を集めることから始めます。

例えば、「今度、社内でBBQ大会があるけど、友人・知人を連れてきてもいいよ」「家族で観られるアニメの上映会&ピザパーティを行うので、友人・知人に家族同伴でもいいので、誘ってみて」という具合にします。誘う側も気兼ねなく友人・知人に声をかけやすくなります。この時、採用をほのめかすことは一切せず、ただ仲良くなることだけに集中します。採用を匂わせると一発で嫌われるからです。

仲良くなれば、自然と相手の人柄や気遣い、リーダーシップなども見えてきます。大勢で関わるので実質多面評価にもなります。相手も、こちらと心の距離が近くなってくると、おのずと、こちらの会社の経営者やビジネスに興味を持ってきますので、ごく自然な流れで話をすれば十分自社をPRすることができます。

こちらが何かを与えたら、相手も何かをお返ししたいという「返報性の原理」が心理的に働くので、自社に合いそうな人は何度かイベントに参加するうちに、どんどん心の距離が近くなるうえ、社内の方々に馴染むようになってきます。

逆に、1度参加して本人が合わなそうだと思った場合は、2回目からは参加しなくなります。また、問題を起こしそうな人がいた場合はイベント参加者全員が認識するので、次回から呼ばれなくなります。

このようにして、自社のファンとなり、文化や社員に馴染む人材プールができあがるのです。この人材プールの中から自社で働いてもいいなと思ってくれている人を直接スカウトする形で採用するとスムースに進みます。

周囲の従業員ともお互いに信頼関係ができているため、足を引っ張ったり変な噂を流したりする人も現れません。むしろ、「いいイベントがあるよ」とどんどん母集団を広げてくれる可能性もあります。

「もうええやん」で口説き落とす

心の距離が近くなり、信頼感が増し「いざ採用」という瞬間は心理的ハードルが高くなります。例えるとすれば、仲の良かった同級生に意を決して告白するような感覚でしょうか。

伝え方を間違えると、悲惨な別れにつながりかねません。ここはテクニックを活用しましょう。

「今度一緒に何かやりたいね」と入社を動機づける

自社で働いてもらうイメージを持ってもらうための一言です。「今度、一緒に何かやりたいね」と言われると、相手はよほどNGでなければ「そうですね」と一緒にどんなことをやれるのか仕事をするイメージを考えます。

「こんなことやったら楽しいね」「これ一緒にやってみない?」と自然な流れで会話が進むことで、相手は一緒に働くイメージがどんどん膨らみ、鮮明になり「この会社で働きたい」と強く心に刻まれるようになります

相手が「今の職場ではこんなこと任せてくれない……」など、現職の愚痴や不満が出てくるようになれば、それだけ心の距離が近づいた証拠になります。ただし、ここで焦って声のかけ方を間違えるとすべてが台無しになるため注意が必要です。

「もうええやん」で入社の背中を押す

心の距離が近づき、相手も自社で働きたい素振りが見えたら、「もうええやん。一緒に働こう」と、入社の背中を押すテストクロージングを試してみましょう。

これは、学生時代、自然に付き合っている流れになってから告白する感覚に近いものです。まずは「一緒に働く」ことを決めてもらい、後日改めて条件面をすり合わせると、自然にうまくいきます。志望動機も、これまでのコミュニケーションで十分に把握できていますし、多くの人の目を通しているので、面接官の評価に差が生じにくいはずです。

コツは、さりげなく「もうええやん」と緩い言葉を使うことです。「もうええやん」の一言には、相手がOKだという前提が含まれています。仮にその場の返事がNGであっても、近い将来、入社してくれる余地を残すことができます。

実際、求める人材をスカウトするとき、このアプローチを繰り返してエースクラスの人材を何人も引き抜いている中小企業はたくさんあります。地方のリフォーム会社が120名の母集団を作り、そこから毎年20名が入社し、企業成長を支えている例があります。

この母集団は自社ファンの集まりなので、採用だけでなく、自社製品やサービスの購入、有望な顧客やアライアンス先の紹介など、ビジネス面での強化にもつながるため、おすすめします。

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まとめ

一般的に言われる採用のセオリーは、大企業や有名企業向けのものが大半です。そのため、知名度のない中小企業は独自のゲリラ戦が効果を発揮しますが、今の時代、求職者に嫌われる行動を取ると、一瞬でネットや口コミで拡散され、その痕跡は消えることがありません。

素直に自社の持ち味を見つめ、求職者の立場で喜んでもらえることを考えて実施することで、「知名度なんて怖くない」状態で採用できるようになります。そうなれば、逆にいい評判や認知が拡がることに繋がり、さらには自社のファンが増え、顧客や収益が増加する好循環に繋がります。「小が大に勝つ」と考えるのではなく、「相手に喜んでもらい、ファンを増やす」視点を採用に取り入れてみてください。

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著者プロフィール

松本利明(人事・戦略コンサルタント HR総研客員研究員)

松本利明(人事・戦略コンサルタント HR総研客員研究員)

PwC、マーサー、アクセンチュア等外資系大手のコンサルティング会社で300社以上の人事コンサルティングに従事後、現職。5万人リストラ、7000名以上のリーダー選抜と育成に従事した人の「目利き」。『できる30代は「これ」しかやらない』(PHP研究所)が近著。著作累計18万部。英国BBC、日本テレビ、TBS、日経新聞、週刊東洋経済、新R25等、メディア実績多数、講演多数。

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