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ジョブクラフティングとは?導入の効果と実践方法を解説

掲載日2024年8月29日

最終更新日2024年9月19日

ジョブクラフティングとは?導入の効果と実践方法を解説

目次

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働き方が多様化する現代、従業員が自らの仕事にやりがいを見いだす方法として「ジョブクラフティング」が注目されています。これは、従業員が自分の仕事を再設計し、より充実感や満足感を得ることを目的としたアプローチです。

この記事では、ジョブクラフティングの概要、具体的な効果、そしてその実践方法について詳しく解説します。

ジョブクラフティングとは

ジョブクラフティングとは

ジョブクラフティングとは、従業員が自らの仕事を自分の能力や興味に基づいてデザインし、カスタマイズするプロセスを指します。

仕事のやる気ややりがいが高まる方法であり、職場内に「こんな仕事は嫌だが、生活のために仕方がない」という空気が感じられる場合には、ジョブクラフティングを試してみることをおすすめします。

ジョブクラフティングの目的

ジョブクラフティングでは、仕事へのやりがいを高めるために、従業員自らが工夫と努力で自分自身の仕事への取り組み方や考え方を変えていきます。ポイントは「自らの工夫と努力」にあります。

「クラフティング(crafting)」という言葉は、一般的には手仕事・工芸といった意味の言葉ですが、ジョブクラフティングにおける「クラフティング」は、「自分の手で作り上げる」という意味で使われています。

ジョブクラフティングが注目される理由

ジョブクラフティングの理論を提唱したのは、米イェール大学経営大学院のエイミー・レズネスキー教授とミシガン大学のジェーン・E・ダットン教授です。彼らは、組織で働く従業員が仕事への愛着と質を高めるためのアプローチとして、この考え方を提唱しました。

近年、この考え方が注目されるようになった理由はいくつかありますが、ひとつは労働者の働き方への考え方が多様化していることにあります。特に日本の場合、これまでのような仕事優先の価値観は見直されるべきという潮流にあり、仕事優先型の価値観を持つ人が仕事に対するモチベーションを保つのが難しくなっています。

そしてもうひとつの理由は労働市場の流動性が高まっていることです。転職が当たり前になったことにより、転職先の職場の文化や人間関係になじめないなど環境の変化が原因でモチベーションを失ってしまうケースがを目にするケースが増え始めました。

変化する働き方やビジネス環境に対して、従業員それぞれが主体的に動く必要性が高まっているのです。

ジョブクラフティングとジョブデザインの違い

ジョブクラフティングとは、指示されたりアドバイスを受けたりするのではなく、自分自身で修正、そして見直しをするやり方です。あくまでも、主体はすべて「自分自身」にあります。

そのため、自ら研修プログラムに参加するなど、従業員が自発的に活動することによって、はじめて成果があがります

従業員の生産性や効率をあげることに寄与するという意味ではジョブデザインに似ていますが、ジョブデザインは基本的に組織が職務や役割を構造的に設計するプロセスであり、通常は従業員ではなく、上司や管理者が組織的に行うものです。

このように従業員が自発的にやるものか、それとも組織が行うものかが大きな違いとなります。

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ジョブクラフティングがもたらす効果

ジョブクラフティングがもたらす効果

ジョブクラフティングがうまくいくと、いったいどのような効果があるのでしょうか。ここでは具体的にその効果について説明します。

従業員が仕事にやりがいを見いだせる

ジョブクラフティングの効果の一つが、従業員のモチベーションのアップです。今までと同じ仕事をしていても、「これは誰かにやらされている」と思うよりも、「これは自分が自発的にやっている仕事だ」と思えたほうが、モチベーションがアップします。

ワークエンゲージメントが向上する

ワークエンゲージメントとは、従業員が自分の仕事に対して持つ情熱や積極的な態度、さらには仕事に対してコミットメントを果たすことを意味する言葉です。要するに、「やりがいを感じながら仕事に没頭する」という意味です。

それを評価するために、ワークエンゲイジメント・スコアという指標があります。厚生労働省の調査によると、「仕事を通じて成長できている」「仕事に自信を持っている」「勤め先でどのようにキャリアを築いていくかという展望が明確である」と感じている人材ほど、このスコアが高いことがわかっています。

ジョブクラフティングとは、まさしくこういう考え方を高めてくれるものです。

なお、日本のエンゲージメントスコアは他国に比べて低い傾向にあると言われており、企業全体での向上を目指す改革が必要とされています。その手段としてもジョブクラフティングは有効な方法の一つと言えるでしょう。

【参考】厚生労働省「「働きがい」をもって働くことのできる環境の実現に向けて」 外部リンク

仕事への向き合い方が変化し、生産性が向上する

ジョブクラフティングの効果の一つに、生産性の向上が挙げられます。これはジョブクラフティングが、職場の生産性を向上させるカイゼンの思想に共通する部分があるからです。

カイゼンは「継続的改善」を意味するものであり、業務やプロセスを小さなステップで継続的に改善することを重視します。ジョブクラフティングはあくまでも従業員個人レベルで行うものではありますが、自分の仕事を継続的に見直し、改善することにより、自分に合った形にカスタマイズすることを重視します。

単に作業を見直し、効率化するだけではなく、周囲との関係性を改善することで、周囲の人たちを業務上の重要な仲間やパートナーとして認識することができます。

この考え方は組織の改善の考え方と親和性が高く、結果的に組織全体の生産性を向上させることにつながります。

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ジョブクラフティングの3つの観点

ジョブクラフティングの3つの観点

次はジョブクラフティング自体についてもう少し詳しく説明します。

ジョブクラフティングには以下の3つの観点があり、それぞれを達成することで従業員が仕事に向き合う姿勢を向上させ、仕事への意欲を高めます。

作業クラフティング

作業クラフティング(ジョブクラフティング)とは、仕事の進め方や業務内容を従業員が自分自身で主体的に構築することにより、やりがいや満足度を高めるための手法です。既存の業務に対する向き合い方を変える、自分が挑戦したい業務にチャレンジするなどがあげられます。

例えば時間がかかって面倒なために、苦手意識を持っている既存業務があったとします。この場合、作業を徹底的に分析し、「なぜこんなに面倒なのか」「かけている時間は本当に適切か」を考えてみます。

改めて問を投げかけることが考えるきっかけとなり、「もしかしたらこの部分を工夫してみると作業時間を短縮できるかもしれない」点を見つけ出して改良することができます。

このようなことを繰り返していくことで、今まで苦手だったり嫌いだったりする作業が楽しく感じられるようになってくるのです。

また、将来的にチャレンジしてみたい仕事があると、自然と自分がとるべきキャリアプランがはっきりしてきて、それに向かって努力するようになります。すると日々の仕事に対する向き合い方も変わり、仕事へのモチベーションも高まることでしょう。

人間関係クラフティング

人間関係クラフティングは、従業員が仕事の役割や環境、特に人間関係に対する認識とアプローチを意識的に設定・改善するための手法です。

従業員の仕事に対する満足度ややりがいは、他者との関係性によって大きく影響を受けます。多くの場合、従業員が業務に対して不満を感じる理由の一つに、人間関係の問題が挙げられます。

この手法を組織に導入する際には、従業員がただ「周囲に自分を理解してもらいたい」「自分が働きやすい環境を作ってほしい」といった受動的な考え方に陥ることがないよう、注意が必要です。むしろ、従業員自身がまず自分の行動や態度を見直し、改善を図ることが重要であることを伝える必要があります。

例えば、ある業務で他者からの対応が辛く感じられる場合、それが単なる相手の意図ではなく、自分自身の態度や対応が原因である可能性もあります。従業員が嫌々仕事をしていると、その態度は周囲にも伝わり、関係性が悪化する原因となり得ます。

このような問題に気づき、従業員が自身の行動や態度を見直すことで、周囲との関係性が改善される可能性が高まります。人間関係クラフティングを通じて、従業員の自己認識を深め、積極的に職場環境の改善に取り組むことができる組織風土を醸成することが、人事施策としての重要なポイントです。

認知クラフティング

認知クラフティングとは、仕事の目的や意味を再評価し、自分の業務に対する認識や捉え方を変えることで、仕事に対する「やらされ感」を軽減し、より主体的に関わる姿勢を身につけるプロセスです。

従業員が仕事に対して「やらされ感」を感じている場合、その業務の目的や意義を再考させることが重要です。業務がどのように社会や顧客、さらには周囲の同僚に貢献しているのかを従業員自身が理解することで、仕事に対する姿勢が大きく改善される可能性があります。

しかし、いきなり広範な社会的視点を持たせようとすると、従業員が具体的な実感を持ちにくく、取り組みが難しく感じられることがあります。そこで、まずは身近な環境から始めることが効果的です。例えば、従業員に対して「自分の貢献がどのようにチームや同僚に役立っているか」を意識させるよう促すことが第一歩となります。

まずは、従業員が周囲の人々にサポートを提供し、感謝される体験を通じて「自分は他者の役に立っている」と実感できる機会を増やすようにしましょう。従業員が自分の仕事に対する認識をポジティブに変え、モチベーションの向上に繋がる効果が期待できます。

認知クラフティングは、従業員の主体性を引き出し、仕事に対する積極的な姿勢を促進するための有効な手段です。導入を検討する際は、従業員一人ひとりの状況に応じたサポートを提供し、適切なフィードバックを行うことで、効果的な導入が可能になります。

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ジョブクラフティングの実践方法

ジョブクラフティングの実践方法

ジョブクラフティングの具体的な実践プロセスを説明します。

業務内容を洗い出す

最初に行うのは業務の洗い出しです。業務を漏れなく洗い出しし終わったら、ジョブクラフティングの対象業務を選定します。

ジョブクラフティングは、あくまでも自分が苦手だったり、嫌だったりする仕事に対するミスマッチ感をなくすことにあるため、そのような作業に対して優先的に行います。

この時に同時に行ってほしいのは、対象となる業務で関わる人物も列挙することです。業務が嫌だと感じる理由が人間関係にあるかどうかの確認と、業務の詳細な掘り下げのためには、関係する人との協力が必要になる場合があるからです。

自己分析をする

業務内容を洗い出したら、次は自分自身の分析も行います。

それまで自分がやってきたことを検証し、今までの業務の中で得意なものや、楽しく取り組むことができたものがなんであったかを思い出し列挙すると、自分の強みや価値観が浮き彫りになります。

この結果は、これからの仕事への取り組み方を変えていく大きなカギとなる情報です。

業務を捉え直す

次に、洗い出した業務内容と自己分析をもとにして、業務のとらえ方を変えていきます。

洗い出した業務内容と自己分析で気が付いた自分自身の強みを組み合わせ、実際にどのような作業に積極的に取り組んでいけそうかを考えます

これにより、やらされている感が強かった仕事、あるいは嫌いな仕事を主体的に能動的に行えるようになるきっかけを見つけることができます。

例えば、作業内容自体は嫌いではないが、一緒に働く同僚が気にくわないので取り組むのが嫌な作業があったとします。その場合、その同僚との関係の改善でで、嫌な作業ではなくなる可能性があります。

人間関係に問題はなくても、その作業自体が難しくつらい場合は、周囲の人々との協力で、困難さを軽減する方法はないかを模索します。

周囲との関係性を深める

次に取り組むべきは周囲との関係性を深めることです。手始めに考えるのは職場の同僚や一緒に業務を行う人々といった、業務で直接関わる周囲の人たちとの関係性です。

単に作業を見直し、効率化するだけではなく、周囲との関係性を見直して良くしていくことで、周囲の人たちが業務上の重要な仲間やパートナーだと思えるようになります。

一例

  • ワークショップや研修、社外のレクリエーション
  • 対面での定期的なミーティング開催
  • 異なる部門と協力してのプロジェクト
  • メンター制度
  • サンクスカードなどの称賛を伝える施策

など

業務を手助けしてくれるだけではなく、業務がうまくいったときに喜びを分かち合ってくれる人たちが周囲にいれば、仕事に対するやりがいはより大きいものとなるでしょう。

振り返りをして同じ工程を繰り返す

上記のプロセスを単純に繰り返していくだけでなく、時に立ち止まり、振り返る時間も必要です。

例えば、対象期間を1カ月間と決め、業務に対する気持ちの変化はどうであったか、業務は改善されたかなどを振り返る記録を毎月残します。ある程度の記録が貯まった時点で、それらの記録から、自分に欠けているものは何か、そしてその次にどうすべきかを考え、行動目標とします。

その際、独善に陥らないよう気を付けましょう。自分の周囲からの助言やフィードバックも謙虚に取り入れることも大切です。

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ジョブクラフティングを成功に導くポイント

ジョブクラフティングには欠点もあります。

それは、熱心に工夫するあまり、自分の仕事の作業内容が属人化してしまい、その業務の担当者の急な欠勤に対応できない点です。また、業務フローの一部だけを突き詰めて効率化させてしまうと、業務フロー全体のバランスが崩れてしまう恐れもあります。

そのため、従業員各自が独学や我流で進めるのではなく、同じ業務を行うグループ単位、職場単位で研修プログラムの受講し、きちんと体系立てた知識を身に付けるところから始めたほうが良いでしょう。

まとめ

現在は急激なDXの推進や国際化など、働く人間を取り巻く環境は複雑化しており、結果として今まで何の不自由もなく仕事をしていた人が、モチベーションを失ってしまうことも起こりえます。

そのような状況に陥らないためにも、ジョブクラフティングを試してみることをおすすめします。すぐに成果を出すことは難しいため、粘り強く続けていく必要はありますが、「やらされ感」が薄くなることで仕事に対するエンゲージメント向上につながることでしょう。

著者プロフィール

マンパワーグループ株式会社

マンパワーグループ株式会社

世界70カ国・地域にオフィスを持ち、ワールドワイドに展開している人材サービスのグローバルカンパニー、ManpowerGroupの100%出資の日本法人。

リクルーティング、評価、研修、人材育成、キャリアマネジメント、アウトソーシング、人材コンサルティングなど、人材に関するあらゆるソリューションを世界的なネットワークで展開する総合人材サービス会社。

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